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映画「ある男」 感想。

Amazonプライムで36時間レンタル500円かな。
もちろん「悪人」妻夫木フィーバーにより、そして「悪人」の世界から抜け出せなくてもよくないと思ったので、どんどん興味をスライドしていくのが良い。

ちなみに悪人にハマるのの何が恐ろしいのって、私は都会から郊外に引っ越したばかりであり、郊外といっても、田舎に片足を突っ込んだような場所なので、田舎の国道を自転車で風を受けて走ってたりすると、田舎の閉塞感の恐怖に襲われるからだわ。

田舎の閉塞感が半分テーマのような作品はいっぱいある。
または田舎でなくても、孤独な生活がテーマの作品もいっぱいある。

先日見た、イニシェリン島の精霊とかも、おそろしかった。
妹は最後、島を抜け出てよかったけど。
よく考えてみたら、怒りと悪人のテーマの1つでもあるよな。
田舎暮らしのどこへも行けなさ、閉塞感。

さて「ある男」。
さぞかしいい俳優に成長しているのではと期待した最新の妻夫木聡。
2022年、去年の映画。
悪人で受賞して以来、12年ぶりに日本アカデミー賞で主演男優賞を受賞したと。

いやしかし私の感想としては、ご本人が自分の転機と言っているくらいの金字塔であり、本当にその後の人生が変わるくらいに渾身で演じたであろう悪人の凄まじさと比較すると、これでどうして受賞できるのかはよくわからなかった。

全然悪くはないんだけど、すごい良いと思ったシーンも特になかった。
美人で資産家の娘、バリキャリ風の共働きの妻がいる弁護士、4歳の子の父親という役どころで、実際の最近の本人に通じる部分があるんだろうとは思うし、終始抑制してるんだろうなという演技とか悪くはないんだけど、別に特に良いとも思わなかったな。

なんなら安藤サクラの方がやっぱりさすがな感じだった。
地方の文房具屋で店番をする、若い子持ちの奥さん。清潔感があって隙がなく、浮ついたところのない、しっかりした女性。そんなに造形的にすごく美人なわけではないが、凛としたたたづまいと、ピシッとした無駄のない身繕いや姿勢、言動から、楚々とした美しさがある女性。
派手ではなく控えめながら、オドオドしたところもない堂々とした女性像。こういう女性像を造形できるのは、さすがの感性だ。
万引き家族の奥さんとか、100円の恋の主人公とか、全然違う人物を造形できるのすごい。
どうせ死ぬなら抗がん剤で苦しい思いさせることなく、もっと好きなものを食べさせて好きなことをさせて人生の楽しさを味合わせてあげたかったと泣くシーンはさすがだった。
こどもを亡くした親の悲哀を表現した演技の中でも、私的には最高峰だ。

いやこの映画はなんといっても、柄本明の怪演だろう。
すごくよかった。
不気味さ、何考えてるかわからない感じ、さすが柄本明だった。

ところで俳優の演技についてはおいておいて映画としての「ある男」。
原作が平野啓一郎。原作読めばわかることなのかもしれないが、映画では、妻が不倫してるらしいことを挿入してくる意味がよくわからなかった。

あと在日であることで、チクチクと嫌味を言われたり差別されたりするシーンがかなり多く挿入されるわけだけど、そんなに?現代で?というのが私にはわからない。
まあそれは当事者じゃないから鈍感なだけで、当事者からしたら、そうなんよ、というところなのかもしれない。

それに実際、彼は弁護士として成功して妻子に恵まれて、出自によってどう足掻いても日向を歩ける気がしないという殺人犯の息子に共感するほどなのか、はちょっと説得力に欠ける。

まあでも悪人の主人公にのめり込んだブッキー自身に重なるものがあるかもね、この弁護士の男の役どころ。
Xさんは誰なのか、どういう男なのか、犯罪者なのか、、それを突き詰めていくうちにそんなに多いわけではないが確実に存在する共鳴する部分から、共感しのめり込んでいく。

そうか、もしかしてラストはそういうことか。
今わかった。
妻の不倫もそういうことか。
つまり、ブッキーは、差別なんかに打ち勝とうとして、努力して、背伸びして、地位を手に入れたけど、正直妻のことも、妻の両親のことも全然好きではなくて、偽りの人生のように思っていた。
だから、捨てたのか。
ちょうど余っている戸籍を見つけたから。
そこに収まったのか。

はっはー、それは面白い。
私はただ単に、酒場でストレス発散で別人のふりを試しにしてみて、別人になり変わるのってこんな感じかと味わってるだけかと思った。
でもそれだと妻の不倫を挟んできた意味がよくわからない。

が、まあその辺はご想像にお任せします、なのかもしれないな。
酒場での遊びなのか、本当に戸籍を頂いちゃってなりすまし生活を始めたのか。

そう思うと面白いけど、それなれそれでそうとはっきりわかるようにしてくれた方が最後のどんでん返しみたいでもっと映画として面白かったかな。
まあ漫画的、映画的になって、リアリティとしては下がるのかもだけど。

あと、展開は色々無理があったな。
大体スケッチブックの絵について、「この絵のような人でした」とXの妻が、ブッキーに見せて、ブッキーがそのスケッチブックの最後の方に不気味な人の顔の絵を発見する。
妻が気づいてなくて、ブッキーが気づくことってある?
と思うけど、まあ百歩譲ってそういうこともあるとしよう。

次だ、絵が似てる、ということから、絵を描いた人を調べると顔がXそっくりだったのでXかと思ったけど、年齢が親子ほども違う、なので父親と推測。
いやさ、親子だから顔がそっくりはありえますし、絵心が遺伝するのはあると思うよ?
だけどだからといって絵がそっくりはないと思うんだな。

しかも、この絵に見覚えがある方はご一報を、とかでSNSで拡散して、不特定多数から情報が寄せられる中の1つとかならわかるんだけど、探してる本人がドンピシャで似てる絵を展覧会で見かけるとかも都合良すぎるような・・・。

あと、戸籍ロンダリングだって、ハガキに堂々と交換相手の名前が書いてあるのに、どうして最初から徹底的に調べないの?
最初から調べてれば、もっと早く、真相に近づけたんでは。
あと原が戸籍変えたいというのはわからんでもない。
まあでもボクシングで新人王になったらさ、色々言われそうで怖いってのはわかるけども、普通にサラリーマンとして生きてる分には父親の犯罪歴なんてわからないんじゃないかと思うんだけど。本人の犯罪歴だって、言わなきゃわからないらしいのに。
戸籍変えても、トラウマ的記憶や自分の中に流れる血筋はついてくるし。
まあでもよ、それでも本人が血筋をリセットできたと思い込めるなら、意味はある。

温泉旅館の息子の方よ、意味がわからんのは。
別にそこに何の執着もないにしたって、別に逃げたいほどの何かがあるとは思えない。
そうか、もしかしたら借金するなり金に困っていて、別に逃げたいわけじゃないけど、ブローカーにそそのかされて、金のために、クリーンで「いいとこの出」な戸籍を売ったのか。

文房具店でもさ、推定30代の男が推定30代の女に「友達になってください」「いやご家庭もあるのに迷惑か」「いや家庭はないんです、子供はいるけど離婚してるので」「全然知らなかった」「知ってたら怖いです」っていう流れもよくわからない。

まあ一言でいうと「知ってただろ!」だと思うんだな。
これだけ文房具屋にかよっていて、おせっかいおばさん達もいて、絶対小耳に挟むだろ。
それに旦那さんがいると思い込んでたんなら、店先での立ち話で満足しろよ。

主題はちょっと「悪人」や「怒り」に似てるね。
何が真実だったのか、あの人はいい人だったのか悪人だったのか、と周りの人間が右往左往する感じとか。
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