SSブログ

感想:アンダーグラウンド、約束された場所で 村上春樹

私は正直いうと、オウムの時間になんでそんなに村上春樹が衝撃を受けたのかよくわからないし、日本社会が衝撃を受けたの??も、よくわからない。

なぜかというと当時子供だったからだと思う。
色々報道されてたのは勿論覚えてるけど、世の中はそういうものなのかなという受け止め方だったのだよな。

今となってはその後には911があったわけだし、テロというものがすごく意識される社会になったわけだけど。
ちなみにサリン時間は1995, 911は2001と、どちらも20年以上前か。。

そんなわけで、村上春樹は好きだったけど、この2冊にはあまり関心がなくて今まで手に取ることがなかった。
が、ここへ来て関心が生まれたので読む。
なんだっけ、でもきっかけはうずまき猫の見つけ方にある。その中で、これらの話を読んでみたいと思わせる何かがあったんじゃないかな。
こっちも1週間前に読んだばかりなのに既に忘れてるけども。

面白かったのは、約束された場所で、つまり、オウム信者のインタビューの方だ。
特にアニメ作ってた人とか、脱走した人の話が面白かった。
ほかの人のも面白かったけど。

進撃の巨人みがあるんだよ。
進撃の巨人も、理想に燃える純粋な少年が調査兵団に入団して、同期や先輩、上司みたいな人間関係の中で、真の目的を知らされない謎の作戦に突然放り込まれたり、地下牢みたいなところに監禁されて処罰を受けたり、やるかやらないか絶体絶命みたいな命令を受けたり。
変なガスがまかれたり、人々がほとんど拷問に近い刑罰を受けてたり。
お粗末すぎるイニシエーションで、LSDを使われて明らかにただラリってるだけの人たちがぞんざいにそこら辺に放置されてて、は?と覚めたり。

なんに使うのかわからない巨大なタンクを作らされて、兵器??だよな?と思ってると、ある日それを警察の目を欺くために隠せ!となって、その上にカモフラージュでこれまたお粗末な発泡スチロールの巨大仏像を作成したり。
情報が限られている中で、嘘か真かもわからない噂と、目撃した一場面や、階下から聞こえてくる謎の悲鳴やら、そんなものから、誰を、何を信じるか。


要するに信じてた人、憧れの人や同僚に対して、なんだこいつ?と、不信感を抱いたりしつつも、だからといってそこを抜けて生きていく目的も術もなく、既に生活は団体内にあるからそうそう抜けはしない。
さらにサラリーマンが最低3年は続けないと、と、ブラック企業にしがみつく感もあったりするし、そこで重用されてたりすると勿論それは大きい。

東大と美人は重用され、出世が早く、ようするに上にとって特に使える技能がないやつは、労働要員か、はてには毒ガスの人体実験要員にされると気がついて、脱出した人もいるが、東大と美人の側で重用された人は、そりゃ抜けないよね。
だって一般社会には違和感があって自分の居場所を見つけにくかった人だもの。
そこで尊師に、お前は優秀だ、と一目置かれて、ほかの民からは尊敬されたり憧れられたりして、人を顎で動かせるんだもの。

ちなみに電気ショックで記憶を消されたという人も出てくる。二年間の記憶がないという。
電気ショックの刑を受けて、図らずも記憶をなくしてしまったのか。ならわかる。
が、記憶を消すことを目的とした刑なんて存在してたら怖いな。。。

もちろんアンダーグラウンドも読み込めば読み込むほど色々思う所はある。
特にアイルランド人の元騎手の話とか、馬とコミュニケーションをとることが大事だというのが面白かったね。時間と関係ない部分で。
人から罰せられないために、不快な思いを避けるために、馬は行動できる。
でも、それよりも、もっと背中を押すようなコミュニケーションの方が効果があると。
馬がレース中に、もうダメだ!みたいな時、うぁあみたいな声をあげるんだと。
その時な、行ける!一緒に行こう!みたいな励ましをするんだと。
そういう、馬の声が聴ける、馬とコミュニケーションできるところが持って生まれた騎手としての才能なんだと思うと。
なるほどなと思うわけだ。
私も今ペットを飼い始めて1ヶ月、結構ペットにコミットしてるからよくわかる。
異種であっても一緒に生活している時間が長いと声を聴けるようになるのだ。
行動、声、、そんなもんからお互いに何を考えてるのか察することができるようになってくるのよな。

いやしかし、こういう膨大なインタビューで、村上春樹は、その人の家庭の背景、どういう両親のもとでどういう育ち方をして、どういう子供だったか、どういう進学をして、どういう職業選択をしたか、全部聴くし、対話してどんな印象を持ったかも全部書き記していて、そのことにも意味はある。

しかし育成環境というので一番わかりやすく心に残ったのは、知能障がいというより情緒障がいのある兄、おそらく自閉症とかをさしているのかしら、、が肝炎で子供のうちに亡くなってしまったことで、世の中は不公平だと悟った人の話。
その人の場合、それが入信に繋がってるんだなと思った。
彼は、兄は今は不幸でも大人になったら幸せになれるに違いないと漠然と信じていた。
ところが日の目も見ないうちに死んでしまった。
子供心に、何それ?信じて努力すれば、報われるんじゃないの?と思うのはすごくよくわかる。

世の中は弱肉強食で、人は煩悩にまみれている。
生き物飼ってみたらよい。
生き物はみんな基本的には弱肉強食の世界で生きていて生殖に熱心で、そういう意味では煩悩まみれで利己的だ。そしてある日あっさり死ぬ。
生きるって、そういう面が不可欠だ。
でもそれはそれとして、それ以外の要素がすっごくたくさんあって、その中には愛すべき美しいものとか、楽しくて面白いものが結構あるのよね。

なんてことをふと思ったわ。
でもふと、解脱を目指しちゃうってそういうことじゃないのかもしれないなと思った。

心身の不調、生きづらさを解消したくて宗教に向かう人は、、。
要するに、自分で勝手にライフスタイルを選べない状況にいるからこそ、宗教でマインドを超越させれば、現実生活に耐えられるって思考なのかもなと。

まあ謎の健康法にハマってる人って、結局、よくよく話を聞くとアトピーとかうつ病とか中々完治や緩解が困難な健康上の課題を克服しようと頑張ってる一環だったりするし。
宗教は謎の健康法に近いものなのかもしれない。

そういえばTwitterで見かけた過食が止まらないと悲鳴をあげてる子のポストを見てると、ひどいことを言ってくる親や、会社の人がいて、明らかに家も出て会社も辞めた方がいいよ、環境変えた方がいいよって思った。
だからといって飛び出して、どこに行き場があるんだ?どこで生きていけるんだ?っていう問題があるから、彼女はそこで頑張ってしまうのもわかるけど。
なんとかなるのに、と私は思ってしまう。

実際7転び8起き精神でいれば、絶対なんとかなると思う。
2転び3起きくらいに考えていると、私はどこにいてもダメなんだって絶望しちゃうかもしれないけど。
そして、環境を変えれば治るって、結構あることだと思う。

さて今思うとオウムって何考えて地下鉄サリン事件を起こしたんだろ?
なんて思って調べたらなんと!!

以外、時事通信の記事。
https://www.jiji.com/sp/v8?id=20220318sarin

結論から言えば、「日本の王」になることだった。その先に「世界統一」の野望があった。…そう書けば、冗談のように思えるかも知れないが、麻原はそのために教団による武装蜂起、国家転覆を画策していた。

それも東京を制圧するために、70トンもの猛毒のサリンを大型ヘリコプターによって空中から散布する計画で、地下鉄サリン事件以前に、富士山の麓にあった教団施設に大量生成のためにサリンプラントの建設を始めていた。後にプラント建設も殺人予備罪として立件され、有罪となっている。
——

うーん、意味わかんないね。
教義的にはゴキブリも殺せないんでしょ?
いや、その後変わったのか、ポアするに。

「人間がこれ以上悪行を積む前に殺害して救済する」という過激な教義。

って書いてあったわ、どこかの記事に。
いやしかし色々情報収集してしまった。

そして、記憶を消す目的で電気ショックしていてその名もニューナルコ。で、効果もあったという。マジか。
しかも、麻原はどっかん、と命名したのを林郁夫がのちにニューナルコと改めたと。
どっちにしてもキャッチーすぎるだろ。

ダーク・ファンタジーを描きたい若い人が見つけたら、参考になっちゃうような逸話がゴロゴロしてそうで、そういうところが鬱だわ。
この辺で私も切り上げないと。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:moblog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Free xml sitemap generator