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映画「永い言い訳」西川美和 感想

西川美和は思えば「ゆれる」しか観てなかったのか、
その割には、私の中で確固たる地位を占めている、才能ある日本の映画監督の一人として。
しかも是枝チルドレンなのな。
まあ「ゆれる」がそれだけ鮮烈だったんだろうな。

さてそんなわけで、西川美和といえばすごい才能があり、それを作品として具現化することに成功し、しかもそれを世にも認められ、さらに美人。
羨ましい限りの存在だと思ってたけど、そんな彼女にも負い目があって、子供を持たずに中年になった人間の負い目、行き場のなさ、30代の頃には一切なかったものだけど、40代になってじわじわとくるこの感じ、そういう負い目を逆手にとって、共感してくれる人はきっといるはずだと思って映画にした、映画はいつもほぼ自分のために書いて作っている、と言っていて、とてもびっくりしたし、より彼女に興味を抱いた。
これは、NHK,Switchで、生き物がかりのリーダーとの対談。2016年か、2018年かその頃のもの。

それを私が今なぜ初見しているかというと、家のDVDレコーダーを数年ぶりにTVに接続したからであり、当時自動録画しないまま見ないで放置していたものを、今になって楽しいでいるわけだが、Swtchはほんと楽しい。しかも当時はまだ弾切れになってなかったんだろう、興味深い対談がそれなりに多い。
西川美和もそうだけど、マツコVSつんくなんて、永久保存版じゃないだろうか。
あとヒャダインVS片岡愛之助とか、うんこドリルの人と古田新太とか。川上未映子と新海誠とか。満島ひかり、いとうせいこう。
新鮮なのは、だいたいどうしてその道に進んだの?という質問に対して、
子供の頃、あるいは学生時代に、それですごく先生にまたは友達に褒められたから、そこで初めて「本当の自分を表現できた」と感じたから、と、自己実現の感覚を覚えた人が多いね。

人の感性は変わらないもので、当時自分が面白いと思って録画していたものは、今見ても面白い。というか当時の方がテレビがんばってたかもな。
スーパープレゼンテーションとかも、ほんと良い番組。

で、それで西川美和の回で、永い言い訳の話をしてる、へえ面白そう、その次の瞬間には、プライムビデオでただで見られる世の中だもんなもはや。
当時はそこまでじゃなかったよね。
そこまでだったら私は海外に赴任するのに、ツタヤで映画を10枚くらい借りてきて、必死でダビングして外付けHDDに取り込んでから旅だったりしたはずないし。

さて映画。
いやあ、若干コメディ要素があるから面白く見てられる。
というかもっくんがやると、コミカルでコメディになるって話で、コメディっぽくしたつもりが西川美和にあったかはわからないけど、その方が見ていて辛くなかったよね。
もっくん演じる主人公は基本的には嫌なやつ、性格の悪い男だから。

でも良い映画だった。
家族が死んだ時、その家族との関係って、もやもやすることが残るケースも多分にあるんだろうと思う。
それが特に長年連れ添ったもの同士のリアルなんだろう。

ファミリーツリーだってそうだったもんね。
どちらが先に離婚を切り出すか、それくらいの距離感の時に、妻が植物状態になり、妻が生前浮気してたことも判明し、子供達との冷え切った関係を再構築し、その死を受け入れるまでの話。

もっくんの場合は、こどもはいないけど、妻との愛情関係は冷え切っていた。
それでも当然ずっとそこにいてくれて当たり前と、空気として扱っていただけで、妻がいることで生活にハリがあり、健康的な生活もできていた。
そして妻を失った中年男は惨めなものだ。
生活は荒廃し、生き甲斐もない。
しかも亡くなった後で妻の本音「もう一ミリも愛してない」を知る。

他人の子供の面倒を見ることで、生きがいとハリが生まれていくが、それでも性格の悪さが出てしまい、人間関係につまづいてその関係も永続しない。
それでも、そうやって人と関わることで、他者との関わりの中で、自分を発見し、他人同士の関係に介入することで、人のことからこそ客観的に見ることができて、何が真理かわかる。
そして自分の犯した過ちに気づく。
「人生は他者だ」という発見をする。

でもそれだけだとぼんやりするじゃん。
私はこの作家が、もっくんにはっきりと

「自分を大事に思ってくれる人を簡単に手放してはいけない。
みくびったり、貶めちゃいけない。そうしないと僕みたいになる。
僕みたいに、愛していいはずの人が誰もいない人生になる。」

と言葉で言わせてるところがとても好きだ。
観客に答えを委ねる、とかよくいうけど、それは時々だたの逃げであり、言いたいことをちゃんと言葉で言う、はっきりとメッセージを提示するって映画でも大切だと思う。

まあでもさ、この映画の中でもっくんは明確に役に立っている。
お父さんだったら、甘えも出て、お母さんだったらこうしてくれるのに!!と憤りを感じる時でも、全然関係ないおっさんが善意で見守りに来てくれてるという事情は子供でもわかるから、「ゆきおくん」という新キャラ、不器用なおっさんとして、別にたいして期待もしてないから、他人だからこそ、お母さんという大黒柱を失って不安定で皆がストレスを抱えている家庭において、緩衝材になれる。
あの家庭、本当にもっくんがいてくれて、長男はだいぶ助かったはずだ。

あとインテリアが好きだ。
目黒区のミッドセンチュリー風の2DKか3DKみたいな落ち着いたマンションに住む美容室の経営者?の妻と作家の夫という、40代のおしゃれな独身夫妻。
一方、トラック野郎の夫と妻、二人の子供、という四人家族のすむ家のリアリティも素晴らしい。

でも一個すごくストレスを感じたのは、池松の滑舌の悪さ。
数箇所、しかも重要なシーンで、なんて言ってるのか聞き取れなかった。
ひどい。こんなの初めて。そうか字幕つけられるかな、一回試してみよう。
数回リピートしたが、まったくわからず。

でも彼だけじゃなくて、長男の子のセリフも、一箇所聞き取れなかったのよねー。
ここも何回かリピートしたけどさっぱり。
しかもここも重要な部分。
なんでこれでOK出すんだろう。
日本語ネイティブの私が邦画の日本語を聞き取れないって初めてだわよ。
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