ロイヤル・テネンバウムズ Huluで見る名作 [映画メモ]
天才マックスの世界に引き続き、ウェス・アンダーソン監督作品。
こちらのほうがより洗練されているということだが、私はマックスのほうが好きかも。
だがこちらも好きだ。
こっちの住人もみんなちょいと風変わりだが、基本的に女はいい女だし、意味のわかんない、ただ不快なだけな嫌なヤツとかはあんまり出てこない。
そして何よりグイネス・パルトロウ演じる姉と、血縁はないが一緒に育った弟の愛が狂おしく切なくて美しい。
これを見ると、年上の女性を思慕する男性というのも可愛らしくていいなと思った。
今まで、なんとなく年上の女性を好きになる男には、自主性とか男らしさみたいなものがちょっと足りなくて
弱かったり甘えん坊だったりするのではないかという感想を持っていて、あんまり高評価ではなかったのだけれど。
そういう脆さも含めて、すごく純粋な感じがして、いいかもしれないなと思った。
もちろんただ単に年上が好きというのと、もっとも身近な女性であるお姉ちゃんが好きというのはまた事情が違うけれど。
それから、この映画の主題はそこよりも、家族を捨てて好き勝手やってた男が、自分が弱った時にだけ都合よく帰ってくるという
ありがちパターンである。日本でもあるみたいだ、こういうの。なぜなら、人生相談で聴いたことあるから。
本当に身勝手としか言いようがないのだが、「もうじき死ぬ。身寄りもない」なんて言われると、どうしたもんかと悩むがの人情ってものよね。
だらしない父親のせいで苦労を強いられた長男ほど、「ふざけんな」となり、そうでもなく育った次男ほど「まあいいじゃないか」となったり。
でもってこの映画だと「もうじき死ぬ」がウソだったりする事情もあるわけなんだけど・・。
この映画の距離の取り方はいいなと思った。
無責任な人間を、腹に煮えくり返るものを抱えながら、無理矢理受け入れることはないのだ。
相手がどんなに窮地に立たされていても。
そうでないと、彼らは自分の行いを悔いることもない。
人生ナメっぱなしになる。
でも彼らが変わろうと努力しているのだったら、適切な距離を保ちながら戸口だけは開けておく。
ちょっとずつまたゼロから、いやマイナスから関係を構築していく。
ほっといた以上、父親や夫としての信頼を今更取り戻すのは無理なのだ。
けれども、その役割は自分には無理だってことを認めた上で、それでも彼らが何を一番必要としているのかを考え、その力になろうとするところが素敵。
だからおそらく、彼は「父」や「夫」ではないけれど「あの人」という位置づけで、関係性を再構築することが出来、その関係性の中でそれなりに満足して幸せに死ぬ事ができたはずだ。
よく考えてみたら、人間関係ってそんなもんかもね。
一応その関係性に役割や肩書きはあるけれど、その役割として認められているとは限らない。
肩書きは兄だけど、実質は母親代わりとしてだったり、友達としてだったり、恋人がわりとしてだったりとして機能している関係性とか世の中にはいっぱいあるだろう。
部下なんだけど、実際は仕事で支えているんじゃなくて、メンタルで支えてる・・なんてありがちだ。
そういえば私がひとつの美容室にけっこう長く通っていたことがあるが、それはもちろんいい仕事してくれるからってのもあるけど、
いつも何か「そっか」と思えるアドバイスをくれるところに彼の価値を置いていたっけな。
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