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朗読者 「愛を読む人」の原作を読む。 [読書メモ]

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)

  • 作者: ベルンハルト シュリンク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05/28
  • メディア: 文庫
 
 
 
 
 
映画「愛を読むひと」の今ひとつ理解出来なかった主人公の感情。
原作ではどのように意図されているのか知りたくて読んでみた。 
 
結果、私が映画で解釈したことと多少違うことが解った。 
ちなみに映画自体、原作にものすごく忠実な部分と、多少台詞などを変えて話を変えているところがあるのでそれを加味した上で。 

私が原作でどういう意図だったのか、最も知りたかったポイント。

①15歳と36歳の情事をどう捉えているのか

大恋愛なのか、淫行なのか、どちらともつきかねる玉虫色のものとして捉えているのか

②なぜ主人公は判決の前に、ハンナと面会しようとしてやっぱり引き返してしまったのか

③なぜ主人公は獄中のハンナに手紙の返事を一度も出さなかったのか

④なぜ主人公は、出所1週間前のハンナと20年ぶりに会った時にそっけなかったのか

⑤なぜハンナは出所の前日に自殺したのか

なんか現代国語の読解問題みたいだけど・・・。

読んでみた結果。

①映画を見た私の感想どおり、やはりこの問題が主人公を苦しめているという解釈で正しかったようだ。

②映画を見た私の感想とはちょっと違かった。ようするにどうすればよいか、ぐるぐるあまりにも考えあぐねた挙句、緊張が高まり過ぎて、問題から逃げて楽になる道に主人公が逃げたのだ。そしてもちろん、その中の一要素として彼らの関係性がそもそもどう捉えるべきかという①の問題も含まれていた。ただ結局一番大きいのは「どういう顔して会ったらいいか解らない」という理由だったみたいで、、要するに既に過去の人でありながらも自分にとって存在が大きすぎる人であったからのようだ。

③これも②に準じるようで、たいした明確な意志があったわけではなく、 自分に危機感を与える大問題から距離を置いて安全地帯にいたかっただけのようだ。

④⑤ここは映画と小説で180度違う話になっていた。映画ではハンナは結局は愛に生きた人で、主人公の愛に破れたから自殺したように思える描写だったが、小説ではハンナはもうずっとアウシュビッツの死者達のことだけを考えて生きてきており心もそっちに行ってしまっていたという話になっていた。

小説は私は以上の5点確かめるために拾い読みしたまでだが、小説のほうが私は好きだ。

というか小説のほうが向いている話なんだと思う。

というのも主人公がぐるぐる思い悩むところがこの小説のメインだと思うので、それが言語化されているほうがより本質が理解できるように感じた。

だからか、小説のほうが共感できるものがあった。

「ぼくは彼女を小さな隙間に入れてやっただけだった。その隙間はぼくにとっては重要だったし、ぼくに何かを与え、ぼくもそのために行動はしたが、隙間は隙間であって、人生の中のちゃんとした場所ではなかった。

しかし、彼女にちゃんとした場所を与える必要があったのだろうか?」

そして彼女が字を書けるようになった時の彼の感想。

「彼女を誇らしく思った。と同時に、その努力が遅すぎたことや、彼女の人生が失われてしまったことを思って悲しくもあった。正しいタイミングを逸してしまい、あまりにも長いあいだ拒んだり、拒まれたりしていたら、最終的に力を注いだり、喜びを持って取り組んだりしても、もう遅すぎるのだ。それとも遅すぎるということはなくて、単に遅いというだけであり、遅くてもやらないよりはましということなのか?ぼくにはわからない。」

ああ。

人生の中のちゃんとした場所。正しいタイミング。

ただこれは彼の彼女への絶対的な愛情がもう遅すぎたものに変質してしまったことを、彼女の読み書きへの努力に投影しているだけであって、

彼女側からしてみたら、十分に意味のあることだったはずだ。

さて何事も遅すぎることはない、と考えてきた私だが、改めてそれは瑞々しい意欲がある限りだとハッとさせられた。

積み重なる疲労などから、ある日、臨界点を超えて夢であったものが色褪せてきたら・・・。

恐ろしい想像だ。

しかし「ちゃんと」していくことが、予防策にはなるだろうと思った。

「ちゃんと」ってようするに、逃げずに突っ込み向き合って行くことだろう。

本心をかわして逃げて・・・その先にあるものは「やっぱり」と戻って来たけどもはやそこなわれた場所ってなことになりかねない。 

 

 

 

 

 


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