映画「マンチェスターバイザシー」の感想 [映画メモ]
これもいつもの通り、町山智弘さんの映画評が印象に残り、ぜひ見てみたいと思っていたので、観た。
まあ、ある程度のあらすじを町山さん解説で知ってしまってから見るので、ああそういう感じねー、、という感じで、彼の映画評を上回るほどの衝撃や感動はなかった。正直。
でも、良作という感じはした。
機微みたいなものを、丁寧に描いていて、リアリティがある。
人生再生物語みたいな感じだと思っていたので、もっと最後上がるのかと思ったけど、そこまでじゃない、そこまで劇的に変わるわけじゃないけど、ほんの少し、確かに変わった、真人間に向けてのスタートを切った感じの手ごたえがあって、その劇的じゃないところが、リバウンドしなさそうでリアルでよい。
それにその真人間に向けての変化、というのも、説得力がある。
こましゃくれていて、器用で、自分がいないとダメとまではいえない年齢、16歳の甥っ子が見せる、弱さ。
そんな甥っ子がなんだかんだで、自分を頼っていることもわかる。
やっぱり、人はそうやって誰かに頼られて、特に子どもに頼られて、それを食わせ、守り、導くために、自分は真人間になれるところがあるんだろうなと改めて思う。
そんな中で、過去の傷を思い切り開かれる。
開かれるから、悲鳴ものだけど、膿も出される。
今更で、壊れた関係は覆水盆に返らずだけど、それでも、元妻からの謝罪と愛の告白は、彼の傷を多少癒しただろう。
というわけで、考え得る中で、一番、リアルな再生だった。
新しい女ができて、とか、新しい子どもに出会って、とかよりも、ずっと現実はこういうもんだと思う、
つまり自分が放置してきた、または崩壊した既存の人間関係のなかに、何かが見つかることも多いと思う。
そして元妻が、すでに新しい旦那がいて、妊娠中、という設定もいいよね。
元妻とまた寄りを戻せるような話ではないので、そういう可能性を封じてあるほうがいいし、リアル。
何がこの映画のいいところなんだろうか。
そこまで評価の高いところなんだろうか。
正直私は、ぱっと言えないけど、自分的には、突然16歳の育児をせよってなった、親じゃない大人げない大人、というものと、ティーンエイジャーの関係性みたいなのは面白かったかな。
いっぱしにセックスもする癖に、おじさんアイス買うからお金頂戴、とかいう面も見せてくるのがリアルだよね、16歳ってそんな感じの年ごろかもしれない。
さらに、おじさんは便利屋なんだからどこでだって仕事できるだろ、とか言ってきたり、メンドクサイから俺のことを人に押し付けて逃げるんだ、とか言ったり、ママに会いにいって傷ついたり、いっぱしの癖にまだ保護が必要な感じのリアリティがいい感じだったし、それにムカつきつつ付き合ってあげたり突き放したりしつつ、実際は自分の問題で手いっぱいな大人。
でも大人の弱さも、16歳ならちょっと解って、大人を思いやってあげる部分も多少はある。
そういうのがしみじみした。
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