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映画「スパイの妻」の感想。 [映画メモ]

「スパイの妻<劇場版>」Blu-ray豪華版

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフト
  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: Blu-ray



「スパイの妻<劇場版>」DVD通常版

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  • 発売日: 2021/03/03
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以下ネタバレ含む感想。



期待値高かったので、思ったより、、、であり、傑作!とか、完成度高い!!って感じではないけど、まあまあ面白かった。

ただ蒼井優が演じる女のキャラクターはうざくて嫌い。

でもいるよね、こういう女。

というのは解る。


私のまわりにもこういうタイプの子は何人かいる。

そして、自分中心のわがままさ、というのは得てして、自己肯定感の高さと連動してるもんだから、そういう人はある種イキイキしてて可愛いところがあって魅力的にもうつる。

が、まあ傍若無人なモンスターでもあるのだが、、、こと、好きな人のために恋や愛に生きてるの!ってことになると、それが動物的正しさともいえるので、是とか非とかは言い難いところはある。


が、、、、蒼井優は女優さんとしてかなり好きで彼女がいろんな映画で演じてきたキャラクターはそれぞれ魅力的だったりもしたけど、ことこのキャラについては、私には全然魅力的には映らなかったので、そこがこの映画は失敗してんのかもね。

蒼井優のこのキャラに引き込まれたら圧倒されたりしないと、映画としてあんまり成立しないというか。。

逆に蒼井優のキャラにもってかれた、って人がいたら、映画として成功してるんじゃないだろうか。


でも、このキャラクターはある種、ステレオタイプ的な女であり、そこがつまらない。

一捻りあって、夫大好きな可憐で天然なかわいこちゃんに見えて実は、夫よりも世界平和を優先する冷徹な正義の人だったりしたら魅力があるけど。

なので、夫を売るなら面白かったけど、夫大好きで、売るのは甥っていうところがね。。。


甥を売ったり、大胆にやりだすところを、虫も殺せなそうなお嬢様の変貌、女の意外性として描いているつもりだとしたら、浅い。


あ、でもこれでふと突然、進撃の巨人を思い出したけど、進撃の巨人は、エレン大好きなミカサが、最後、エレンを斬るから、そういう意味ではよかったよね。


そういえば第一にどういうこと?と思ったところは、なぜ蒼井優は甥を売ったのか、というところ。

既に夫と甥に疑いはかけられていたから、甥を売れば、甥は夫をかばってすべてを被るだろう・・・それによって、夫は守られるだろう、という賭けだ、というのが蒼井優の表向きの理屈なのだろうか。

でも、そこには、女の浅知恵的な理屈が働いていそう。

たとえば、東出演じる憲兵は、自分の幼馴染で自分に惚れているから、犯人さえあげれば、自分のことを思って、それ以上夫のことまでは追求してこないはず、というような。

そして、「おばさんはおじさんのことを何にも解ってない、何にも知らない」と甥に言われたこと、甥と夫が結託して自分の知らない秘密を持っていること、それに嫉妬して、甥を売って、夫の共犯者の座に自分が座る、というのが真の目的説もある、うん、これはありそうだ。


しかし普通に考えると、甥を売る必然性がわかりづらい。

けど、、これもまた進撃の巨人を思い出したけど、いよいよ目をつけられているとなった時に、ジークが自分の両親を密告して、自分と祖父母を守ったように、自らが密告者になるということは、自らは体制の味方だ、ということになり、そこで尻尾切りができるというものなのだろうかねえ。


で、密告したうえで、さらに「売国奴になるなんてありえない。私がスパイの妻呼ばわりされることになったっていいっていうの?!」と言ってたのを急に手のひらを変えすように、突然、夫と一緒に日本軍の所業を世界へ告発しようと言い出す。

満州で撮影されたフィルムを見て、考えを変えた、という設定なんだろうけど、、、かなりの180度転換。

そこもちょっとびっくり。

ただこれはまあ、この女の価値観の第一に、「夫と一緒にいること」があることを考えれば、この転換はそれほど不思議ではないのだが。。


さて、思うところはあともう一つ。

史実として、とてもセンシティブなものを扱っているので、、その場合は、ドキュメンタリーとして完全に史実に基づく作りにしない限り、主観で描くのは取り扱い注意だな、と感じた。

その決まりの悪さはある。


まるでこの映画は、アメリカの原爆投下への流れを肯定しているかのように捉えられ兼ねないのが気になった。



つまり日本軍が間違っていると思っている、軍国主義に毒されてないインテリ日本人は当時間違いなくいたと思う。でも、そのために米国が参戦して日本を打ち負かせてくれれば良い、とまで思う考えは本当に当時、コスモポリタンを自称するようなインテリ日本人の間にあったのだろうか。

史実としてその辺がわからないので、もやっとする。


戦争に負けるということが何を意味するのか、当時のインテリ日本人がわかっていなかったとはちょっと想像しづらい。もちろん原爆投下されることまでは想像に至らなかったにしても、本土決戦になり多数の民間人が死んだ上に植民地化されることは想像に難くないはずで、そうなったら人権もクソもなく奴隷のような扱いになる、、そのあたりまでは考えられたのでは、と思うと、いったん戦争に至ってしまった以上は、勝つしか選択肢はない、というものではなかったのだろうか。。

わからない。金と権力と国際的な人脈がある自分は、戦局がやばくなる前に外国に亡命できる自由な立場、というのがあって、一般庶民の日本人がどうなるかは、自分と切り離して考えていたのだろうか。。


ただそのへんの背景は、小道具扱いであり、メインは蒼井優演じる女のヤバさみたいなところなので、あんまり深追いしても仕方がないのだろうか、、、でも黒沢監督自身が「日本の戦争犯罪を映画にすること」についても一家言どこかで述べていたので、このへんも言いたいことがあったのではないかとは思う。



さて、そのあたりを考えた時に、米国が参戦して・・まで考える高橋一生は本当に米国あたりのスパイだったのかもしれないよね、とも思う。しかも自分の主義主張によりスパイをやってた。


でもスパイにしては、妻に情報話しすぎだし、やむなく話すに至ったにしても、金庫の番号を教えてるのに、そのまま文書を保管しておくとか油断しすぎ。

それを思うと、やっぱり本当にスパイではなく、ただの偶然に関東軍の真実を目撃してしまった正義の告発者だったのかもしれない。



さて、この映画の良かったところ。

高橋一生のキャスティングかな。スマートに立ち振舞うけけど、心の奥底で何考えてるのかよくわからない男、というこの設定にぴったり。

蒼井優が、この時代の若奥様っぽくやろうとして、若干わざとらしくなりすぎてるのに比べると、高橋一生のほうは、そこまでわざとらしくなくて、昔の人にも見えるけど、どの時代での通用しそうなニュートラルな演技がよい。

あと、最後、蒼井優をまいていくところね。

これは期待通りだった。

そもそも本当にスパイだったとしたら、絶対にうまいこといってまいていくよね。


さらに、スパイじゃなかったとしても、英語が喋れる甥と違って、足でまとい感が半端ないし、「あなたのために私こんなことをしてあげたの!」っていう勝手な行動がウザそうだし。

そもそも、上海にいる英国人の友人にフィルムを預けていて、それを取り戻すために金払えと言われている、、とかも、妻をうまく利用して旅行準備のカモフラージュに使ったり、挙句に妻をまくための夫のウソだったんじゃないかと思うもんね。


ただ一方で、妻を愛してもいたと思うし、愛しているからこそ、危険な目にあわせたくなくて置き去りにした、というのもあると思う。


とくにスパイだったかどうか、というのは、もう一回見直してみたら、実は発見があって、「あ、そういうことだったのか!」とクリアになる部分があるかもしれない。


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