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カズオイシグロ「クララとお日さま」の感想。 [読書メモ]

クララとお日さま

クララとお日さま

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/03/02
  • メディア: Kindle版

表紙絵がめっちゃかわいいよね、素敵。

こういう絵が描けたらいいな、模写でもしようかな、まずは、と思った。

内容に関しては、AF、つまりArtificial Friend、という、12~16歳くらいの主に思春期の子供の相手をする自己学習するアンドロイドの話で、正直言ってあまりにも「私を離さないで」にソックリだった。


「私を離さないで」を初めて読んだ時のことは忘れない。

私にとっては新鮮な世界観だったし、繊細で、素晴らしかった。


でもあまりにも似てるんだよな、これは。

クララは、太陽エネルギーで充電されて動くので、次第にお日様を神のように考え始め、AIなりに信仰心を持ち、祈りをささげる。自分の主人である子どもを本気で愛し、そのためを思って、必死で太陽に祈りをささげるその様は、本当にいじらしい。

それでも、最後、その子が大人になったら、トイストーリーよろしく、物置へ、物置から廃棄へ、という流れをたどる。

アンドロイドは、どんどん新型が出てくるから、旧型のアンドロイドに、二度目の出番はないのだ。

思春期の5,6年を一緒に過ごし、それを一生として、人生を終える。


AIがやがて、こんなふうに感情を理解するようになり、人の知らないところで、懸命に祈りをささげるくらいに、人のためを思って行動するようになるくらい、AI自ら感情を持つようになるかもしれない。そしてつまりAIが信仰心を持つ可能性というのも一つのテーマなのだと思う。

AIをなるべく人に近いように、人間の感情がわかるように学習を重ねていけば、やがてあり得ることかもしれない。


「私を離さないで」は、臓器移植のために作られたクローン人間の子供たちの話である。

当たり前に感情を持って、まわりの人の感情に影響されたり、彼らのためを思って行動したり、そうやってごく真っ当に日々を生きているのに、人間としては社会的にカウントされず、認められていない。

境遇も似ているし、そんな彼らがある種の信仰、または迷信ともいえるものに、救いがあるかもしれないと道を見出そうとするプロットも同じ。

トーンの切なさも同じ。

決して悪くはないから、もちろん最後まで完読(若干流し読みだが)したけど、焼き直し感が半端なかったのは残念。


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