花さき山 [読書メモ]
- 作者: 斎藤 隆介
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 1969/12/31
- メディア: 新書
子供の頃、一番好きだった本について、ふと思い出した。
一番好きだったと記憶していたのは、さとうさとるのコロボックル・シリーズだ。
本当に面白いし、世界観も素敵だし、大好きだった。
だが、こちらは少年小説といえよう。
小学校2年生以上くらいが対象だった記憶がある。
もっと原点にさかのぼったときに、あるのは花さき山だ。
郵便不正事件で逮捕・起訴された村木厚子さんが、
拘置所生活中に読み、こころの支えになったという記事を雑誌で読んで思いだした。
「やさしいことを一つすると、一つ、花さき山に花が咲く」
あやという女の子が、自分も綺麗なおべべが欲しいのに、
自分は我慢して、妹に買ってあげて、というんだよね。
あと確か、双子の2歳児くらいの男の子の兄のほうが、
弟のためにおっぱいを我慢する話もあった気がする。
そういうやさしい行い一つにつき、花さき山に一つ、美しい花が咲くという、
とてもビジュアルイメージ的にも印象的な美しい話だった。
自己実現がもてはやされる今、自己犠牲は流行らない。
だけど、こういう優しさでもって、日本人は生きてきたような気がする。
わたしが、このくだりを書きながら、涙が出てくるのは
自分がこういう子供だったからだろう。
私の精神性の根っこにある本だ。
花さき山は実在しない。
多くの場合、褒められるためや、好かれるため、
評価を上げるためといったパフォーマンスではない、
本当のやさしさから出た、やさしい振舞いは、人目につかない。
でも、ひょんなところで、そういったやさしさを目撃した私達は感動する。
心に花が咲く。
だから、やっぱり実在してるのと同じなんだよな、と大人になった私は思う。
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