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西加奈子 サラバ! 感想。 [読書メモ]

上巻読み終わったところ。
今まで彼女の作品を二作品読んだことがあったようだ。
確か印象あまり良くなかったような、とおぼろげに思い出した。
このブログを読んで明確にその時思ったことを思い出せたのでよかった。
サラバ!を読んでみてもやっぱり俗っぽさが鼻につき、直木賞作家ってこういうことなのかなぁって言う印象だったのだが、それをそのまま黄色いぞうの感想に私は書いてた。

黄色いゾウは、甘い幻想に寄りすぎだったようだが、サラバ!は、エグいほどチープで低俗な価値観に寄りすぎてて、短編なら低俗な男の人生の半生、みたいな感じで成立すると思うけど、文庫本3冊に渡って大河的にやる価値あんの?あると思った。
西加奈子が対談でも自分の10年が詰まっているといい、かなり自分の人生を投影してると思うのに、私小説や自伝的小説という打ち出し方はしていないのだが、そのバランスの取り方もズルくてダサい感じ。
創作でありエンタメ小説なら、要らない記録が多すぎ。私の半生の自伝的小説だというなら、堂々とそう打ち出すことに意味がある気がする。
彼女はインタビューなどで、書く責任、書く覚悟と言いながら、逃げてる感じがする。

サラバ!の中身は所々私怨臭と自慢臭がぷんぷんする。
それは、小説本題に絡まないなくてよい部分を凄い熱量で描くからで、お前が個人的にこれ書いて満たされたかった部分なんだなぁって感じるんだよ、ヒシヒシと。

自己矛盾や自己憐憫、自己愛など、自分の内部をなるべく美化せずに中立に理性的に分析して描こうと試みる知性、しかも己だと開示した上で。そしてその分析が的確で繊細で唸らされる。
そんな中村うさぎのやり方と知性と作家性を尊敬するが、なんというか西加奈子は対極にあるかも、その意味においては。

やり方もこずるいし、分析も表現力も粗い。

サラバ!の主人公の男、歩の矮小さ、器用さ、ずるさ、平凡な価値観、そういうフツーさ、が西加奈子の持ち味なのかな。

だから大衆受けするんかね。

なんというかね、自分のこととなったら、言葉を選ぶと思うの。なるべく正確に理解したいし、誤解もされたくないから。
だけど、自分じゃなくて主人公だから、だから乱暴なエグい言葉で切って捨てていいの?
でも読んでいる人は嫌な気持ちになるよ。
西加奈子が、いやこれは己に向けたヤイバなんで、とわかるように自伝として描くなら許される事でも、エンタメ小説という体裁にしたならば。
はい、ブース、はい、デーブ、みたいな感じよ、あなたの描いてること。
あなたの試みは、はいブース、はいデーブみたいな世の中だけど、そこから抜け出よう!って感じなんだと思うんだけど、その世界の捉え方の知覚自体がそもそも凡庸な感性に感じちゃう。

前提がもうなんか乱暴なんだよなー。
はいブースな世の中やんかー、でな?
みたいな感じだけど、それは貴方の大味な味覚をもってして、世の中はそうと表現してしまえるんだよなと。

お笑い芸人の方が向いてるかもね。
そういう、一般大衆的で、ズバッと切って捨てれる感性は。
だってブスやん、ワッハッハー、みたいな。

そういうのは、インタビューでも現れていて、差別意識についても真摯に向き合ってるといってて。
でもその発言が既に、『その点、〇〇や〇〇も私の小説には出てきますんで、興味持って読んでください』とさらっと言ってるんだが。

その発言がまた乱暴なんだよね。。
〇〇や〇〇は通常差別されるもんですが、てバイアスが彼女の中にある。

例えばサラバ!でも、後半、イケメン謳歌してた主人公は若ハゲになり、引きこもり、それでさらにブクブク太って、自信も友人も喪い、ナイナイ尽くしの30代。
そして、そんな中、幼少期を過ごしたエジプトを訪ねて、当時相思相愛の大親友と奇跡的に再会できた。
子供時代、彼との間にあった絶対的愛情が、自分の基盤になると思えた。
で、今までの自分のグラグラした半生を小説に書こうと決意。
終わり、なんだと。

まあ下巻は読んでみたいけど、で?って思ってしまうかな。
結局、西加奈子は美醜に振り回され過ぎなんだよと思う。
主人公、歩だって、勝手に美しさに優越感持って、それに頼って調子こいて生きてきて、だからこそ世間的に良しとされない外見になった途端に、劣等感に打ちのめされて身動き取れなくなって恨み辛み。
これをブラックコメディとして短編でやるならいいよ。
でも超大作、超傑作、とやられると、お前の世界の捉え方はそんな程度なのかねぇ、と。
エジプトのことを描きたいなら、分けた方が良かったんじゃない?とも思う。
この美醜珍道中に、エジプトでの美しい友情を混ぜる必要があったかと。
あ、出かけないと!




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