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「死にたくなったら電話して」 感想 [読書メモ]


死にたくなったら電話して

死にたくなったら電話して

  • 作者: 李龍徳
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/11/20
  • メディア: 単行本

過去10年くらいに文藝賞をとった作品のうち、興味がありそうなあらすじだったので、この本を読んでみた。


久しぶりに小説が面白くて、ページをめくるのが苦にならず、すらすらと一晩で読んだし、読後感にも興奮が残った。


だけど、惜しいというか、残念。


時々、鋭い描写があるのだが、全体として得るものがない。


実話に基づく、とかだったら説得力もあるけど、創作だとしたら、本当に「わからない」「かもしれない」

の連続すぎて、謎をばらまくだけばらまいて回収せずに事切れたって感じ。


それでも事切れるところまで圧巻の迫力、というんだったらいいんだけど、はあ?はあ、はあ?という

のがどんどん増えていき、そんだけかって感じ。


以下、ネタバレします。


死に向かって、何もかもどうでもよくなっていくカップル。


でもそれに引きづられて、筋の改修までどうでもよくなっちゃってどうすんの?


主人公の語りだから、主人公が無気力になり、どうでもよくなってきたというのにあわせて、伏線もぜんぶぐだぐだになってく感じ。


赤い車買ったのにね、なんだったの?


はあ今更とつぜん在日関係あるわけないだろ、突然ぶっこみ過ぎで、人物造形からもかけ離れててわけわからん。


死に向かってどうでもよくなってるのに、なんで結婚には執着?それも突然意味わからん。


朝キャバの同僚に、話を聞きにいって、彼女の噂をしいれるくだりがぐっだぐだ。

無性愛者とかぶっこんできたけど、それ必要だった?

元カレの話とかも、「らしい」「かもしれない」「とまた聞きした」と、あまりに弱い。

弱い上にわかりづらい。


元カレの綺麗な顔に傷とつけたら、自分と彼がどう感じるか試してみたかったのが動機だとしたら、

今回は、入学金100万円ぬすまれてみたら、自分と彼がどう感じるか試してみたかったっていうことなのかなあ?と主人公がぼんやりどうでもよくなりながら考えてるんだけど、、、弱い。


あと初美がそんなに心理実験したがりなんだったら、またはそういう嗜虐趣味で興奮するようなところがあるんだったら、もっとスプラッタな方向にいきそうなもんだし、100万円なくなるって弱すぎる。


いくら三浪生にとっての大事な入学金だとしても、そんなの不可逆的な金額でもなく多少気持ちをくじくくらいだし。

あとは徳山へ生きる方向への説得を試みようとしてくるバイト先の女先輩への返信メールへの過剰な憎悪ね。

女先輩のメールが長すぎてうざすぎるのが、不気味だけど、それに対してのつぶさな長すぎる過剰な憎悪メールも意味がわからない。


自己開示しすぎでうざいとか、パワハラを受けてもただ耐え忍んでたまたま乗り越えて現代の奴隷ご苦労様、その生き方を他人に押し付けないでね、とか、そういう方向性で切って捨てるのはわかるんだが。


外見を攻撃したり、子供が産めないという告白をえぐるように愚弄したり、とにかく総当たり攻撃する意味がよくわからない。

もちろん初美が、「私の男に手を出すな」という嫉妬心から攻撃してるんだったら、女が女を徹底的に痛めつけるやり方でそうでたか、という解釈もできるんだが、、、初美が徳山に執着するのは「女として」という感じでもないというのが匂わされているので、その辺もなんか変。


映画でいうところのゴーン・ガールにしても、ジョーカーにしても、どうしてこういう人となりになったのかが語られて、それなりの納得感があるからカタルシスもあるんだと思うけど、そういうのがないと、人物造形のつじつまがよくわからないまま、ただありったけサイコさんというだけでは、まったく面白くない。


だいたいIQが高くて容姿にも恵まれ、弁もたち、、そんな人間が、19歳とかで、まわりに刃を向けまくってるのがよくわからない。


そんなだったら、すでに15歳くらいで、刃を向けまくって、19歳なら悟ってるんでは?

しかも愚鈍な民たちを論破してるだけで、面白い?

キャバクラとか大学で見られる社会なんて、一部なんだから、街レベルで通用する外見でキャバクラを試したあとは、国レベルで通用する頭脳で、もっと強い敵を相手にやってみるんじゃない?


それにそこそこ愚鈍で顔だけはいい徳山に、「魂レベルで私たちは似ている」「私たちは友情が成り立たない性分」という感じで、寄ってくるわけだが、そんなにありとあらゆる人間に愚かさや醜さを発見するような初美が、徳山のことだけは全く否定せず攻撃せず、すべて下から受け入れる、というのもよくわからないわ。


ま、ちょっと作者も高学歴のようだし、作者が主人公に自己投影しすぎ、ナルが入りすぎた作品という感じがしました。


きっと作者も「チラシモデルになれる程度」に美しいのだろうと思って、作者近影を見てみたらそんなことはなかった。。。


とはいえ、こんなふうに熱くいろいろ書きたくさせる何かはある話だったんだよな。


なにか熱い核はあるんだけど、なにか決定的に足りない惜しさ。










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