又吉の火花を読んだ感想 [読書メモ]
又吉の緩いファンである私。
又吉の火花、読みたいなあと思い、色々見てみたら中古で買うより電子書籍で買った方が安いくらいだったので、hontoで買っておいてあった。
honto、30%OFFキャンペーンとかやってるので、買い方によっては結構安いのである。
そしたら芥川賞の発表。
あらあら、こりゃ早く読まなければと本日読了。
良作。
泣けるし。
もともと又吉の芸風が好きだったが、彼の芸風に通じる所がある。
ピースの笑いって、世の中を優しい目で見た、笑わせつつもホロりとさせるようなのが多いなと思っていたけど、そういう眼差しは今作でも共通。
筋も明確で、訴えたいこともしっかりあって伝わってくるし、何より現役の売れっ子お笑い芸人が、お笑いの世界やお笑いについての考えを緻密に書いているという所にルポタージュとして高い価値がある。
又吉の文学的センスと笑いのセンスが活かされているので、もちろん文学的センスを感じさせる作品ではあるのだが、芥川賞ものか?というのが、私の感想。
大変よく書けてますね!
大変良く出来ました。
って感じなんだよなー。
作品に泣かされる箇所はあったし、感動もしたし、よく書けてるな!と思ったけど、こいつ天才!この感性はちょっとただもんじゃないな的な衝撃はなかった。
何処か、夢を叶える象とか、もしドラを読んでるような感覚。
つまり、よく書けてる小説じたての自己啓発本みたいな感じ。
そら、プロの作家じゃないんだから仕方ないかなと思うし、プロの作家じゃなくてここまで書ければ充分凄いと思う。
それに、太宰大好き、西加奈子大好きの文学大好き読書家お笑い芸人の又吉が芥川賞をとった作品です、ということで読む前に私にバイアスが掛かってしまっている。
なので、全く無名の新人のデビュー作品、面白いらしいよー、位で読むのとは違う。
ただ、芥川賞をとったということだけで、粗筋も評判も全く知らないままで読んだので、その意味ではバイアスなし。
今もまだ他の人の感想は一切見聞きしてない状態で、これを書いている。
ちなみに太田光の小説や、名前忘れてしまった、ポプラ社の新人賞とった俳優の小説なんかと共通する読後感もある。
つまり、ストーリー展開、プロットなどはしっかりしていて物語としての完成度は高いけど、やっぱり表現力が作家の筆ではない感じですね。
又吉はそんな中で頑張って善戦してはいるけど、まぁよく頑張りました位な感じ、その点は。
この三つの中でいうと、どちらかといえば物語の完成度としては俳優のが一番高いし、才能もあっちの方がどちらかといえばあると思う。
でも芥川賞、小説、って枠で思うから抵抗を感じるのであって、これがルポタージュ、随筆って枠だったら、すごく良い随筆。
キャパの作品みたいだ。
あれだって稀代のカメラマンが、カメラマンとしてのしあがる過程と生活を書いているところに価値があり、しかし彼の文学的センスによって文学作品としても非常に素晴らしいものになっていた。
でもキャパの文学的センスが驚異的であることと比べると、又吉の文学的センスは西加奈子レベルな感じかなー。
ちなみにこの作品によって、お笑い芸人を目指す生き様は、人生を十全に生きる生き方であり、保証のなさに脅えながらも勝負に生きた時間は夢が散っても決して無駄じゃない、これからの生きる糧になる時間なんだよ!って又吉は言っている。
昔学校の先生が言ってた、何事も一生懸命やれば必ず将来身になるっていう事と同義なんだけど、やっぱり本物の現役お笑い芸人だけにそこに熱と説得力があるので、若者にいい影響を与えられそうな本だなと思った。
でも、
お笑いに賭けた青春を爽やかに描く!
とかって帯に書かれてもおかしくない位にまだ安全圏で書いてる感じ。
また伝えたいことに関して、普通の人なら言葉を重ねてクドクド説明しないと伝えられないことを、的確な一句やプロットで見事に伝えられたりするのが作家的な才能かと思うが、そういうのは全く感じなかった。
全部、登場人物がクドクド説明。
それが自己啓発ハウトゥー小説っぽい所以なのだが。
その2点から、文学としての切れ味や凄み、センスはアラサーちゃんや、少年アヤちゃんのほうが光ってるように感じた。
ちなみに二箇所、又吉個人の私怨か?と思う箇所があった。
ひとつは、なんで大阪選抜まで行ったのにサッカー辞めちゃったの?と聞かれたことに対して、想像力のない薄っぺらい人間みたいに斬って捨ててるのだが、そこだけ不適当な憎悪が感じられた。
もう一点は、先輩の別れた女の庇い方が尋常じゃなく、大事なことなんで2回言った!!みたいなところね。
2015-07-27 21:17
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