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ねじまき鳥クロニクル 村上春樹 [読書メモ]

ねじまき鳥クロニクル 全3巻 完結セット (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル 全3巻 完結セット (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/11/05
  • メディア: 文庫

 

村上春樹が好き、と言いつつ実はちゃんと読んでなかったシリーズ第二弾。

学生でお金のない私は新刊を颯爽と購入するようないさぎのよい真似はしたことがなく、

かといって文庫になるまで待とうともせず、手に入ったのが三巻目だったので、三巻目から読み始め、あんまり興味を持てずに終了してた気がする。

でもモンゴルでの皮剥ぎのことはしっかり覚えていたので、あるいは一巻もある程度は読んだのかもしれない。

今回も実をいうと、二巻→三巻→一巻という順番で、しかも割と雑に飛ばし読み。

でも大作だったと思うし、大作を読み終えて一応の達成感。

どうも私は奥さんを探しに出る中年男の話に、あまり興味が持てなかったみたいだ。

太陽の東、国境の西、、だっけ?
あれは最後まで読んでクソツマラナイと思った記憶があるし。

まあ、何一つ持たない中年の個人的闘いに若くて自分の未来を信じて疑わない私が興味を持てなかったのは無理もないと思った。

というわけで、今読めてちょうど良かったのではないかと思う。


今回もそれほど愛着があるわけではないけど、薄っぺらくはなく、枕元に置いておいて、たまに拾い読みしたい示唆に富んだ本だと思った。

逆にいうと、かなり粗く読んだので、まだ理解していない細部がいっぱいあると思う。

まず一つ言えるのは、私が今になって急に村上作品を根掘り葉掘り読み始めたきっかけは「灰田に会いたい」からだったのだが、今まで読んだ中では、どの作品の誰よりも、灰田は、ねじまき鳥クロニクルのシナモンに似てた。

そして案の定、私がこの作品で一番心をひかれた人物はシナモンだった。

でもやっぱり主人公の前から忽然と姿を消してしまって以後登場しない役回りなんだよね。。

クミコもメイも、加納マルタもクレタも綿谷昇も、個人的な思い入れは感じなかった。

それよりは満州、モンゴル、シベリアの挿入話が非常に重要で忘れられない印象を残し、特色がある。

また特に二巻は、ハッとする言葉がいっぱい詰まっていた。

叔父さんが、主人公に闘いかたを教えるところとか。

簡単なところに時間をかけろ。

そして主人公が、やるべきことを見極め、負け戦だとしても闘って勝つことを決意するところは好きだ。

でももっとこの話のいいところはラストだ。
クミコが自分で自分の手を汚してケリをつけるところ。

お姫様を救うナイトの話で終わってたら、ハッピーエンドではあるけど、なんとまあつまらない。

ナイトの助けは借りるけど、最後はお姫様が自分で殺す。
しかも村上ワールドでよくあるように抽象的にとかパラレルワールドで、みたいな安全なものでなく、逮捕されるという現実的に手を汚して。

ファンタジーに逃げちゃうぬるさや逃げが、そこでしっかり締められてて、ともすればバラバラで散漫になってしまいそうな物語がタイトにぐぐっと底上げされたと感じた。

それに最初は確かに訳もわからず戦わされてる感があるけど、途中からは自覚的に自分の意思で闘ってしかも勝っているのがよい。

さてでも物語中で、クミコ、クレタ、主人公、メイは、なんだかんだ助け合ってしっかりと自分の闘いを一歩前に進められていいし、マルタやナツメグはもう自己確立できてる感じだけど、シナモンや間宮中尉はどうなるんだろうと思った。

彼らは損なわれたままなのか?

あるいは自分の物語を主人公に語ることで、何か少しは前に進んだのだろうか?

しかもシナモンも間宮中尉も、理不尽な損なわれ方だ。
クミコとかクレタは、ある種の生まれもった宿命との闘いだけど、、。
まあ何もしてないし何もなかったのに、ある日唐突に理不尽に奪われるというのも、宿命というものなのか。

そしてシナモンはきっと初めて自分の物語を語った、ねじまき鳥クロニクルという形で。
そして初めて取り乱した。
それは確かに何かよい兆しではあるのだろう。

間宮中尉はどうなのか。
間宮中尉はカッコいい。
誰に助けを借りるでもなく、じっくり準備し、命を引き換えにして強大な悪に闘いに挑んだからだ。
でも還付なきまでに負け、脱け殻になった。

主人公は逆に全然かっこよくない。
所詮はいつも他人のせいにしている。
メイにも、かわいそう、何でも引き受けちゃうのね、と言われてるが、この当たりのセリフを言わせる村上春樹は、ハードボイルドワンダーランドと一緒で、村上春樹自身がこういうスタンスにいそうでキモイと私が思っている部分ではある。

主人公に印籠を渡し、主人公が勝ったことで、間宮中尉の呪いも解けたのだったらいいのにな。


<関連>

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