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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い [映画メモ]

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私の感想を一言で言うと、ものすごく惜しい映画。
まず主人公役の少年トーマス・ホーンが素晴らしい。
BSでやっているのをHDDに録画していたので、はじめ、途中からだけ少し見てしまったのだけど、
この少年とおじいさんのシーンを見て「これはなにがしか凄く貴重なものが写っている」と感銘を受けた。 
 
こんなに繊細で鋭利な存在感を持った少年は早々いないし、
おそらくは一時期のものだろう。
 
そして、あとでwikiを見て納得。
この子は、そもそもは子役ではなく、医者を両親に持つ小学生クイズ王であり、一風変わった天才少年というのは
役柄というよりも、この子そのものだったのだ。 
 
 
私の場合はおそらく彼のようなタイプの人間がすごく好きで琴線に触れるのだろう、
10歳程度の少年だからこそ保持されるその必死のバランスのようなものに心を打たれた。
 
人間、個性が大事だとか言うけれど、時々それはキレイゴトにしか聞こえない。 
でも彼を見ていると、弱点だらけで不完全だけれども、そのままでいい、そのままが美しいと思わせられる。 
 
思春期を迎えたら、自分を守る殻を身につけるか、または色気づいて社交性を身につけるか、
今までより世間から受け入れられなくなり屈折したり、くすんだりするか、、どう変化するかは解らないけれどもとにかく変化は間違いない。
今の純粋さ全開の、今のバランスは、今の彼自身でしか表現できないもので、貴重なものだ。
 
というわけで、主人公の存在感がキーになっている映画だった。
そして映画製作陣も最初から十分にそのつもりだったらしく、子役はオーディションで選ぶつもりでもあったらしい。
納得。
 
でもね、ほんと子役頼みの映画だよ。
その意図は成功しているだけに、脚本が惜しい!!!!
 
まず「 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」というタイトルも活かしきれてない!
映画を見る前に、たぶんどこかで見た映画番宣では父と子の関係を表現していると聞いていた記憶がある。
まあ親子の関係なんてそんなもんだったりするだろうと思ってたけど、この映画ではそういう関係ではなかった。

さらに作中で、主人公が父親やおじいさんと、矛盾した表現を言い合って楽しむ場面が出てくる。
例は忘れたけど、たとえば「平凡な超人」みたいな感じで、形容詞と名詞が矛盾している言葉を言い合う。
だから、一瞬、タイトルもそれかなあ?と思ったのだけど、そうなってないし。
 
母親との関係という説もあるけど、それは私的にはうーん、、である。
確かに母親こそ、普通は父親よりも、五月蝿くて近い関係性である。
で、この作品中でも、母親は息子に対して距離をつめてくるんで、結果的には五月蝿いけど近い、という関係にはなっている。
でも、母子の関係性を言い表すタイトルだとすると、母子の関係性がテーマの作品ってこと?って感じになってしまうが、
この映画における母子の関係性というのは、一部でしかないと思うし。。 
 
ちなみに「第六区を探す」調査のまとめスクラップブックのタイトルが「ものすごく〜」なのだけど、それも本当に意味不明。
そもそも、この「第六区を探す」というの自体も、もっと視聴者に意味がわかるものだったら、より見ていて楽しかったのにね。
最後、主人公は謎を解いて、父親からのメッセージを手に入れるけど、それでも意味がわからなかった。
 
あとはラストが気に入らない。
鍵の正体と留守電の正体がわかるところまでは良かったのだ。
ある意味自分のことで手一杯で、自分と自分の父親のことしか考えてなかった主人公が、
他人の傷を知り、その役に立つ事を通じて、自分の傷も受け入れられるようになる。
ボランティアがセラピーになるように、彼のがむしゃらな行動は、はからずも父の死を乗り越えるいい効果を生んだ。
そこまでは、期待通りの甘いメッセージが出てくるよりもずっと陳腐じゃなくて良かったはず。
 
でも、そこからの最後のまとめが勿体なさすぎる。
まず主人公が、訪ねて歩いたブラックさん達に出す手紙が陳腐。
まとめがこれかよ、という中身の無さ。
そしてその手紙を読んで感涙するブラックさん達の描写も陳腐。 

また冒険が終わり、母親を受け入れる余裕が出来て、一緒に父親の思い出を語りあうことが出来るようになるのは
いいのだけど、母親が実は彼の部屋を漁って、彼がしていることを把握しており、彼の行く先々を先回りして訪ねて
いるっていうのは、ちょっと閉口。。
息子を理解して、近づこうという試みということですし、心配なのはわかるけど、母親のウザさ全開で萎えるわー。
せめて勝手にやったことなら最後まで黙ってればいいのに。。 
 
あとおじいちゃんとの関係も、ちょっと尻すぼみかなあ。
何かありそな期待感だけ持たせた割には、結局何もない、みたいな。
おじいちゃんのyes noの手のひらだって、視覚的にはユニークな映像がとれていいし、おじいちゃんにはおじいちゃんの傷があったことは解るけど、引っ張ったなら、何かそこに意味が欲しかった。
まあドイツってことは強調していたから、世代的にもホロコースト絡みの悲劇であることは推察され、911に寄らず、人は被害者になったり加害者になったりすることを暗喩しているのかもしれないし、、、、悲劇は繰り返し起こることを暗喩しているのかもしれないし、、痛みの経験者が力を貸すことができるということを示しているのかもしれないけどね。。

 
ちなみに911絡みで言うと・・・。
私も911は、ほぼリアルタイムでニュースで見ていて、2機目の航空機が突っこんだ時の戦慄は忘れない。
1機目は、ちょっと狙いがずれていたこともあり、事故かもしれないとみんなも思っていたと思うが、
2機目ということで、そして確信を持って狙いを定めて突っ込んで来た感があったことで、これはわざとなんだと明確に解ったあの時。

旅客機でビルに突っ込むなんていう発想がそれまでなかった。もちろん、自爆テロという概念がなければそりゃそうだよね。
自分は死なない、殺す対象が明確、という、普通考えられる殺戮とは違うからこそ、そんな発想がありえるとは考えなかった。
311ほどではないにしろ、911でも私は結構動揺した。
人が飛び降りている映像のことも、覚えている。
 
対岸の火事のように興味がなかったわけではないが、魅入られたように調べたわけでもない。
というわけで、テレビのニュースで報道されたことくらいしか知らず、そんなに詳しいことは知らなかった。 
 
で、この映画では106階で父親は商談をしていた設定になっている。
妻と電話で話した彼は、ビルを外側から見ている妻に「一刻も早く逃げて」と言われても、「消防士が大丈夫だと言っているから待機する」といってきかない。
そして家の留守電に6回メッセージを吹き込んで、以降死体も見つからず。
 
そうだったんだなあ、と初めて思い至った。
もちろんこの時すでに、彼らの逃げ道は絶たれていたのかもしれないが、 もしかしたら逃げ道はまだあったのかもしれないのに、
常識的な指示に従い、常識的な行動をとったことで死んでいったのかもしれなかったのかと思うと、やりきれないなと思った。
 
事実、911では情報が錯綜しており、そういうことが結構あったそうだ。
 
デマに踊らされてパニックを起こすのもアレだが、公的な情報を信用するのも難があるのだな、と。
最後は自分の嗅覚に従うのが、一番悔いがないだろうと思った。
 
そしてあの日、WTCから飛び降りた人は200人にものぼったということを今日知った。
数人なわけないけど、でもそれくらいと思っていたかった。
飛び降りる恐怖を軽く上回る苦痛や恐怖が中にはあったのだろう。
または何百人という人が炎と熱から逃れようと窓に殺到していたのだとしたら、ほぼ自動的に押し出されて行ったのかもしれない。
 
それにしてもパラスシュート、ロープ、縄はしご、、、そういった原始的なものの備えは、なんだかんだいって必要だなと思った。
イチかバチかに賭けられるくらいの可能性は欲しかっただろう。
現代的な非常手段が用意されていたって、機能しない可能性は多大にある。
 
ちょっとこれを読んでみたくなった。
 
9・11生死を分けた102分  崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言

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  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
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  • メディア: 単行本
<おまけ>
ユーザレビューを見てみる。
 
 
2chの皆さんの感想を読んでみたら、じいさんはホロコーストではなくて、
ドレスデン攻撃の被害を受けたという設定らしいということがわかった。
ドレスデンは連合国軍の勝利がほぼ確定している中での、英米軍による無差別攻撃であり、
そういう意味ではほぼヒロシマのような位置づけらしい。 
 
 
なるほどね、これでちょっと意味がわかった。
よすうるにアメリカ人は911でテロの犠牲になったけど、無辜の人々への無差別攻撃という意味では
ドレスデンでテロに等しい行動をしたことを示唆しているわけだ。
これは確かにあんまり大声で言っちゃうと、「テロと戦争を一緒にするな!」と米国内で批判が巻き起こる
こと間違いなしだから、なんとなく匂わせて、被害者意識によりすぎないようにバランスをとったのだろう。
 
あとは、
 
●母親の大きな愛情に感動した
●主人公がウザくて全く感情移入出来ない 
 
という意見が多いことにびっくり。
中には、私と同様、母親の息子の部屋漁り&先回りに引いている人もいたけど少数派。
あと映画では確かに主人公はアスペルガー症候群の検査を受けたけど結果は「不確定」だった、と言っているんだけど、
障害のある子どもの話、みたいに受け止めた人が多いようね。
これがアスペなら、たぶん私の兄はアスペだし、私だってアスペかも、というくらいに
私にとっては、何の違和感もなく、むしろ親近感と感情移入をもって見てしまったので、ショック。。
意見や感覚は十人十色で仕方ないとはいえ、ここまで世の人々と感覚がずれるとちょっと自分が心配。 
 
 

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