完璧な人 [生活雑感]
どうでもいいことしか言わない。
ある人と別れるに至った直接的な理由のひとつだ。
つまり、もともと好きじゃなかったか、既に好きじゃなかったことに気付いたのだ。
かたや、好きな人がいる。 もう20年近く大好きな漫画家さんで、作家さん自体がとても素敵であろうことに疑いの余地はなかったけど、神の域で好きであったから、そして作品自体が好きであったから、もうじゅうぶんであって作家個人について詮索することはなかった。
だが偶然数年前に、彼のインタビュー記事を読んで、語ってもやはりこれだけ琴線に触れ示唆に富み、ステキだと感激したことを思い出した。
あれからまたしばらく経って、いままた、偶然彼の対談記事を読んで、なんだか泣きたくなった。
本当に好きな人というのは、こういうものなんだろう。
発する一言ひとことが、ぜんぶ琴線に触れるのだ。
そんなことってふつうあるだろうか。
漫画はね、セリフぜんぶ無駄なくメチャクチャかっこよく大好きで、それだって希有なことだけど。
飾らないごくふつうの言葉を自然に使った受け答えすべてが大好きで、インスピレーションを与えてくれるというのはキセキじゃないだろか。
本来恋はこのようなキセキであるべきはずなのに、 おつきあいする人がそうであるべきなのに、嗚呼現実の正反対具合はいったい何なのだろう。
病理は根深い。 、、、のか?
ずんずん深いところに刺さり、気付きをあたえる彼の発言集。
●かきはじめると子供の頃のことを思い出しました。 ちょっと厄介だなと思うくらい(笑)。 恨みもいっぱい出てくるから。
●僕は最近開き直って美化するんです。 読者に失礼にならない程度に良くない思い出も、マンガ内では良い話にしてしまう。 言いたくても言えなかったことを言っちゃうし、言わなければよかったことは言わないままにする。記憶を書き換えているような感覚になることもあります。
●僕は最近はよくわからないものは描かないことにしています。
なんというか、薄々そうすべきだと自分で思っていたが、それはいけないのではないかという姿勢を、愛してやまず尊敬してやまない人が取り入れていると知り、それでよかったのか、と、楽になったような、背中を押される ような、やっと理解者に出逢えたような、赦されるような、懐かしい泣きたいような気持ちになったのであった。
●高野さんと話しているとイチロー話している草野球選手のような気持ちになりますよね。
こんな神のごとき人なのに、謙虚な姿勢を保っているところも好きです。
姿は初めて拝見したのだけど、思った通りの清潔な佇まいでそれも、嗚呼と感動した。
ファッションセンスなど期待以上の完璧具合だ。
ムダな隙がないのに肩の力も抜けていて、嫌味やケレンミなど鼻につく部分が微塵もない。
絵やネームのセンスの神具合からすれば、当たり前なのだが それを確認できて幸せだ。
ほんとうに好きなのだなと思った。
つまり、理想の男性のタイプを訊かれたら、わたしは迷わず松本大洋さんですと答えるべきなのだ。
あ、ちなみに宮沢賢治さんもかぎりなく理想の男性です。
もちろん御二人とも会ったことすらないのだから、そんなことを言う資格すらないのかもしれないけれど。
でもその人の発するコトバ一つで、生きている幸せを感じられるのであれば、勝手に言うくらいは許してほしい。
ちなみに、松本大洋は、五十嵐大介さんに対して怖いと言う。
僕の尊敬度合いと比例して怖い、と。
好きであればあるほど、尊敬すればするほど近づく事がなんだか怖い。
だから私は好きじゃない人とおつきあいしてしまうのだろうか。
BRUTUS (ブルータス) 2012年 3/1号 [雑誌]
- 作者:
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: 雑誌
ちなみに数年前にインタビュー記事を読んだときの感激を書いていたのを発見!
数年前じゃなくて、1年前だったけど。↓
http://flying-fly.blog.so-net.ne.jp/2011-01-10-1
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